★★ 赤字は少女・サチ,青字はサチの兄の会話です ★★
★★ 投影の後半は、プラネタリウム生解説による『今夜の星空』です ★★
●企 画 :(財)横浜市青少年科学普及協会 (以下、敬称を省略します)
脚 本 :渡辺 秀夫
録 音 :(株)サウンドクラフト
制 作 :(株)五藤光学研究所 ソフト企画部
演 出 :奥木 晋
●ミキサー :波田野 宏之
選 曲 :芳澤 真由美
●ナレーター :兄 :森川 智之
:サチ:松下 美由紀
1.導入部
BGM … 夕焼け
見て! お兄ちゃん。真っ赤な太陽が沈んでいくよ!
そうだね、サチ。久しぶりに眺める夕陽はきれいだね。
でも、直接太陽を見つめると目を痛めるから、気を付けなさい。
うん、分かった。あっ、そうだ、デジタルカメラで写しておこうっと。
SE … 「ピッ!」「ピッ」
あれ、太陽に黒いシミのような物があるよ。
よく気づいたね。「黒点」と言うんだけど、それにしても大きいね。
黒点って、なぁに?
ちょっと待ってね。このノートパソコンでインターネットに繋いで、説明してあげるから…
BGM … 夕焼けの続き。
薄明が終わり、冬の星座が輝く。
あ、「オリオン座」や「おうし座」の星が見えてきた。どちらも冬の星座だよね。
SE:キーボードの音,マウスクリックの音
サチ! デジタルカメラで撮した太陽を、モニターで見せてくれる?
はい、どうぞ。
SE「ピッ」
ああ、やっぱりね…。こんなに大きな黒点は初めて見たよ。
何かあったの?
うん。インターネットで太陽を調べていたら、こんな警報が見つかったんだ。
太陽フレア警報? なぁに、これ。
小学生のサチに説明するには、ちょっと難しいかも知れないなぁ。
そんなこと言わないで、ちゃんと説明して〜!
はいはい。それじゃ今から太陽のいろんな秘密を調べていくけど、大丈夫かな?
大丈夫! でも、なるべく易しく…ね。
BGM … タイトル
2.太陽は星の仲間
あっ、これは地球だね。
そう。僕達が住んでいる地球は、太陽系の惑星の一つだ。
地球から約1億5千万km離れた所に太陽が輝いている。
僕達人類を含む生命体は、太陽からの光や熱など、多くの恵みを受けて進化してきた。
私達にとって、太陽はかけがえの無い星なのね。
うん。その太陽も、実は夜空に輝いている星と同じような天体なんだ。
人間に例えて見ると、ちょうど「働き盛りの壮年の星」ってとこかな。
それ、どういう意味?
例えば「オリオン座」の「オリオン星雲」では、星の赤ちゃんが生まれている。
じゃぁ次に、「おうし座」の「昴」を見てごらん。
青白くて奇麗な星がいっぱい!
生まれたばかりの若い星で、表面の温度が高いからだよ。
「オリオン座」の「ベテルギウス」は、赤いわよ。
そろそろ寿命を迎えたために星が膨らんで、温度が低くなったから赤く見えるんだ。
それに比べて、太陽は白っぽく見えるわね。
表面温度が6千度くらいだからさ。年齢は46億歳ほどで、まだ寿命の半分しか経っていない。
星には年齢の違いがあるのかぁ。太陽はまだまだ長生きできるんだね。
3.太陽の構造
さて次は、太陽の中がどうなってるのか、内部の秘密を調べるよ。
殆どが水素でできた大きなボールのようだけど、内部はとても複雑なんだ。
うわぁ、何重にもなってる。ただの火の玉じゃないのね。
中心部は、「核」と呼ばている。
ここで水素ガスが燃えてるの?
いや、そうじゃない。温度も圧力も、ものすごく高い核の中では「核融合反応」が起きている。
なんだか難しそうね。
簡単に言うと、水素原子は1個の陽子で出来ている。
核の中で水素原子同士がものすごいスピードでぶつかると、4個の水素原子がくっついて、
1個のヘリウム原子に変わるんだ。これを「核融合」と言う。
ヘリウムって、風船に入れると浮く、あのガスのこと?
そう。核融合だと、水素が燃える時とは比べ物にならないほど、たくさんのエネルギーが出るんだ。
そのエネルギーって、何なの?
最初は「ガンマ線」という、非常に短い波長の電磁波としてエネルギーが発生する。
それが核を包む「放射層」に広がっていく途中で、少しづつ波長の長い電磁波に変わっていく。
放射層の中はエネルギーが一杯に詰まっているので、時間をかけてゆっくりと外側に出ていくんだ。
そして、核で発生したエネルギーの殆どは、熱に変わっていく。
放射層の外側は、温度も圧力もかなり低くなって、ガスが自由に動ける「対流層」だ。
ここでは熱いガスが上に昇って、冷えたガスが下に潜り込む「対流」が起きている。
対流って、水が沸騰する時の動きと同じだね。
そう。そのために太陽の表面温度が、いつも一定に保たれているんだよ。
さあ、いよいよ太陽の表面だ。温度も圧力も更に低くなって、約6千度の水素ガスで覆われている。
ただし、単純なガスの塊ではなく、まるで生き物のように活動しているんだ。
たとえば、どんなふうに?
この写真を見てごらん。
私がデジタルカメラで撮影したのと、似ているね。
そう。僕達がいつも見ているのが「光球」、つまり太陽の表面だ。
天体望遠鏡に、光を弱めるフイルターを取り付けて撮影したのが、この写真さ。
白っぽい表面のあちこちに、シミのような模様が見えるわね。
周りより温度が低い部分は光が少ないために黒くなって見える。これが「黒点」だ。
逆に、周りより温度が高い部分は光が多いので白く見える。これが「白斑」。
絶えず動いて見える砂粒のような模様は「粒状班」で、表面で起きている小さな対流現象だ。
粒状班って、お味噌汁の中の粒々が、お椀の中で動いているのと同じ様なもの?
うん、そうだね。
次にこれを見てごらん。
Hα線という、水素の炎の波長だけを通す、特殊なフイルターで撮影したのがこの写真だ。
光球を包むように赤い色をした「彩層」が見えている。その姿は白色像とは全く違って見えるだろう?
うん、同じ太陽だとは思えないわ。
よく見ると、時には「フレア」と呼ばれる大爆発や、巨大な炎のようなプロミネンスなども見えるんだ。
太陽って、真ん丸のボールだと思っていたけど、2つの顔があるのね。
そうなんだ。その2重になった顔を重ねて見ると、こんな姿になる。
光球は撮影が簡単で、しかも黒点や白斑などの観測によって、太陽活動の概略が分かる。
その光球を包む、彩層を観測するのはちょっと難しいけど、太陽活動を詳しく教えてくれるものなんだよ。
その観測で、太陽のいろんな秘密が解けるのね。
4.いろいろな太陽像
ところでサチ! 太陽の顔の秘密はこれだけじゃないんだよ。
まだ別の顔があるの?
うん。人間の目では可視光線しか見えないけど、電磁波は波長によっていろんな種類がある。
その中に含まれる、僕達にとって有害な紫外線やX線を、地球の大気が遮ってくれる。
大気は一部の電磁波しか通さないから「大気の窓」と呼んでいるけど、観測には都合が悪いんだ。
大気の窓から差し込む電磁波でしか、観測できないという訳ね。
紫外線やX線などの観測には、大気の窓の外に出るしかないんだ。さて、どうすればいいかな?
大気の無い宇宙に出て、人工衛星で観測すればいいと思うよ。
そうだね。
たとえばこれはアメリカの人工衛星が、紫外線の目で見た太陽だ。
太陽から吹き出している炎は何?
これは高さが約40万km、地球の直径の30倍以上もある、巨大なプロミネンスだ。
すごいわね。紫外線の目だと、こんな物が見えるのかぁ。
これは日本の衛星「ようこう」が、X線の目で見た太陽だ。
X線って、レントゲン写真に使う電磁波でしょ?
そう、数百万度という高温のガスからは、X線がたくさん出ている。
本当は人間の目に見えない電磁波だけど、この映像はX線が強い部分ほど明るく表示している。
グツグツと煮えたぎっているみたいだね。
明るい部分はフレアなどから、高温のガスが吹き出している部分だ。
暗い部分はコロナホールと言って、ここからは大量の「太陽風」が吹き出しているらしい。
太陽がこんな顔を持っているとは、知らなかったわ。
これは太陽観測衛星が見た、コロナの姿だ。
真ん中の光球の部分は明るすぎるから蓋をして隠してるけど、その周りに吹き出しているだろう?
うん。ものすごいスピードで広がってる。
気圧は低いけど太陽のエネルギーによって、温度は百万度以上になっているそうだよ。
わぁ、すごい。皆既日食の時にしか見えないコロナが、人工衛星からだといつでも見えるんだね。
このように比べて見ると、同じ太陽でも、いろいろな顔を持っていることが分かるだろう?
ほんと! 太陽って、とても不思議な秘密をもっていたのね。
それじゃぁ、今までの太陽の構造を整理してみよう。
全てのエネルギーは、中心部の核融合反応から始まる。
それが電磁波や熱に変化しながら、ジワジワと表面に広がってきて、光球部分で輝いている。
光球には、黒点や白斑などが見えることがある。
そのすぐ外側には、太陽の様子が詳しく分かる彩層があり、時にはフレアやプロミネンスも見える。
そしてその外側には、コロナがどこまでも広がっている。
その通り!
5.太陽風とオーロラ
さっ、今度は、太陽の周りのガスを調べてみよう。
ここは真空に近いほど気圧が低い。成分の殆どは水素だが、核融合でできたヘリウムも僅かにある。
どんな元素も普通の状態では、中心にある陽子や中性子の周りを、電子が取り囲んで回っている。
しかしここでは太陽のエネルギーによって温度がものすごく高いので、プラズマ状態になっている。
プラズマ?
電子が陽子からはぎ取られて、バラバラになっている状態のことだよ。
そのプラズマが、まるで風のように宇宙空間に広がっていく。これを「太陽風」と呼んでいる。
ということは、太陽風は陽子と電子がバラバラになった、風のようなもの?
そう。ところでサチは、地球全体が磁石になっていることを知ってるよね。
うん。北極や南極付近から、磁力線が出ているんでしょう?
太陽風が地球の近くに来ると、地球の磁力線とぶつかる。
そうすると、どうなるの?
地球の磁力線は太陽と反対方向に流されて、歪んだ形の「地球磁気圏」を作る。
一方の太陽風は、地球磁気圏の外側に回り込んで流れていく。
地球磁気圏の尻尾の近くでは、プラズマの塊ができる。
これが太陽風によってゴム紐のようにどんどん伸ばされ、ある時、ちぎれてしまう。
切れた後はどうなるの?
元に戻される時の勢いで、大量のプラズマが北極圏と南極圏に飛び込んでくる。
そして上空百km付近まで近づくと、地球大気の窒素や酸素の元素とぶつかり始める。
そうすると、その元素特有の光で、淡く輝くんだ。
わかった。それがオーロラなんでしょう?
そういうこと。北極圏や南極圏では、夜空が赤や緑に染まるオーロラが見える。
オーロラは、ギリシャ神話に登場する『曙の女神』の名前なんだよ。
あ、そう言われてみれば、神秘的で女神の姿にも見えるよね。
私には太陽がくれた、秘密のカーテンに見えるわ。
BGM
6.自転と磁力線
さあ次は、「なぜ黒点ができるのか?」という秘密に迫ってみよう。
これは毎日の黒点の動きを、早回しにして見たものだ。さて、これから何が分かるかな?
どの黒点も動いているわね。もしかしたら、太陽は地球みたいに自転してるのかな?
よく気付いたね。太陽はゆっくりと自転しているんだ。
でも地球と違って殆どが水素ガスの塊だから、場所によって自転の速さが異なる。
たとえば太陽の赤道付近は約27日で一周するが、そこから離れるほど遅くなる。
それじゃ、捻れてしまうよ?
そう。自転速度に差があるために「差動回転」と呼んでいる。これが黒点ができる原因の一つなんだ。
それ、どういう意味?
太陽は地球に比べて3千倍ほど強い磁力を持っていて、太陽の内部を突き抜けている。
ところが差動回転によって、赤道付近の磁力線は曲げられて横方向に伸ばされ、捻れて巻き付く。
巻き付いた磁力線は、今度は対流層の流れに乗って更に曲げられ、その一部は太陽の表面に近づく。
つまり、磁力線がグニャグニャに曲がってしまうのね。
表面近くの磁力線の一部は、更に対流層の流れによって浮き上がり、ついには表面に突き出てしまう。
その部分は、熱の対流が邪魔されるために温度が下がって、黒いシミのように見えるんだ。
それが黒点なの?
そう。黒点の殆どは磁力線が表面から突き出た場所に、2ヶ所づつペアになってできるんだよ。
そして、太陽の上空に飛び出した磁力線に沿って、高温の水素ガスが絡み付くんだ。
それがプロミネンス?
そういうこと。プロミネンスが太陽の縁にできると、まるでアーチのように見えることもある。
プロミネンスは特殊なフイルターを使わないと観測できないが、とても壮大なんだ。
大きなものは地球の直径の、数十倍もの高さに吹き上がるらしいよ。
ふ〜ん。太陽には、いろんな秘密があるんだね。
7.11年周期
ところでサチ。実はこの写真のように、黒点が少ない時期と、多い時期とがあるんだよ。
あら、そうなの? どうして?
見てごらん。このグラフは、4百年ほど前からの黒点の数を纏めたものだ。
黒点が増えたり減ったりしているだろう?
ほ〜んとだ。
西暦千七百年前後の黒点が少ない時期には、地球が冷えて氷河期に似たような気候が続いたそうだよ。
黒点の数が、地球の気候にも関係するという訳ね。でも、どうして黒点が増えたり減ったりするの?
その原因を調べるために今でも研究が続いているんだ。だからはっきりとは言えないけど、
太陽の磁場が約11年の周期で入れ替わり、その時に活動が激しくなって、黒点も増えるらしい。
つまり、太陽の磁石のN極とS極が入れ替わってしまうのね。その後は、どうなるの?
磁場の反転が終わって安定した後は太陽活動が落ち着き、黒点も少なくなると考えられている。
これは皆既日食の時に撮影されたコロナだけど、活動期と活動期以外の時では形が違うだろう?
あっ、ほんとだ。磁場が反転中の活動期では、コロナの形が丸くなっているね。
それが終わって磁場が安定している時は、横に長く伸びている。
ところで、お兄ちゃん。今の太陽はどっちなの?
この図を見てごらん。折れ線グラフは12年前からの黒点の数の変化を示している。
赤く見えるのは何?
X線観測衛星「ようこう」で見た太陽の姿で、X線が強いほど明るく写っている。
「ようこう」が観測を始めた時は、前回の活動期で黒点も多いし、X線も強かった。
でも、しばらくして活動が弱まると黒点が減って、X線の量も百分の1程度に減ったそうだ。
でも、またグラフの値が上がってきたよ。
そうだね。西暦2千年頃にまた、太陽活動がピークを迎ると予想されているんだ。
あら。それじゃもう、太陽の活動期に入っているの?
うん。これを見てごらん。太陽観測衛星が見た太陽だ。
そろそろ磁場が入れ替わる時期だから、磁力線が太陽の表面で渦巻くようになって、黒点も多くなる。
太陽表面では白く見えている「フレア」が発生して、巨大なプロミネンスも吹き上がるんだ。
そしてコロナが四方に広がり、コロナホールからは大量の太陽風が吹き出る。
わぁ。すごい! 夕陽で見えた大きな黒点は、そのためだったのね。
8.フレア警報
さぁ、いよいよ最初に出てきた「フレア警報」の話に入るよ。
うん。ワクワクするわ。
このインターネット情報によると、どうやら巨大なフレアが発生したらしいね。
この明るい部分のこと? でも、フレアって、いったい何なの?
簡単に言うと、太陽の表面で起きる爆発現象で、ここから大量のプラズマが吹き出る事があるんだ。
この「フレア警報」って、どこから出ているの?
日本では平磯宇宙環境センターが、いつも太陽電波を観測している。
フレア付近から出る電波を調べて、プラズマや太陽風が、いつ地球に届くかを調べているそうだ。
影響が大きいと判断された場合は、いろいろな機関や組織に警報を出してくれるんだ。
なぜフレア警報が必要なの?
太陽からはいろいろな粒子や電磁波が出ていて、それぞれに速度や影響が違うんだ。
たとえば?
X線は電磁波の仲間だから、光と一緒に8分後には地球に届く。
宇宙飛行士には危険だけど、大気に吸収されるから地上には届かない。
高いエネルギーを持った高速粒子はややゆっくりだが、人工衛星などに害を与える可能性がある。
太陽風はもっと速度が遅いので2〜3日かかり、地球磁気圏や電離層を乱すことがある。
いずれにしても、太陽活動が激しくなると、地球にもいろいろな影響が出てくる。
この図のように、飛行機や無線通信に悪い影響が出たり、人工衛星や宇宙飛行士にも危険が及ぶ。
大気に守られているはずの地上でも、送電線やパイプラインに被害が出た事もあるんだよ。
えぇっ! 送電線にも被害が出るの?
うん。これは前回の活動期に、カナダのケベック州の広い範囲で、実際にあった停電事故だ。
電離層が異常になって、長い送電線に大電流が流れてしまい、途中のトランスが焼けてしまったんだ。
太陽活動によって、こんなひどい事故が起きることもあるのね。
ねえ、お兄ちゃん。今までは悪い話ばかりだけど、何かいい話は無いの?
そうだね。一つくらいはいい事があってもいいよね。
たとえば太陽活動が活発になって太陽風が増えると、オーロラはどうなるかな?
あっ、そうだ。オーロラが明るく奇麗に見えそうだね。私、オーロラ観測ツアーに行きたいな。
普段はカナダや北欧などの北極圏へ行かないと見えないオーロラが、日本で見えるかもしれないよ。
え、ホント?
これは前回の活動期に、北海道で見えたオーロラなんだ。
うわぁ〜っ、真っ赤だよ。
真夜中に空が赤く染まったために、大きな火災だと勘違いして消防車が出たんだってさ。
へえ〜。今回も見えるのかな? 楽しみだわぁ。
おにいちゃん! こうしていろんな話を聞いてみると、太陽ってたくさんの秘密を持った星なのね。
そうだねぇサチ。僕もそう思うよ。
それじゃそろそろ、今夜の星座観測を始めようか?
うん。そうしよう!
BGM
−−− おわり −−−