試験中の火星探査機「フェニックス」
Credit: NASA/JPL/UA/Lockheed Martin
(関連写真)
火星に着陸した「フェニックス探査機」(想像図)
Credit: NASA/JPL-Caltech/UA/Lockheed Martin
「フェニックス探査機」(想像図・しくみ)
Credit: NASA/JPL-Caltech/UA/Lockheed Martin
約10ヶ月間、およそ6億8千万kmの旅を経て、2008年5月26日08時38分24秒に、
火星の北緯約68.22度 東経約234.4度の地点
(「ボレアリス平原」(Vastitas Borealis)
に無事着陸しました。
15分20秒かけてその信号が地球にとどいたのが、08時53分44秒でした。
(資料:
1
2)
着陸から約22時間後、 マーズ・レコネサンス・オービターが火星をまわる軌道上から撮影した フェニックスの着陸地付近。 フェニックス探査機、 降下時に分離した パラシュートとバックシェル、 耐熱シールドとその地面への衝突跡 が写っています。 (地上のフェニックスから見たパラシュートなど)
探査機の脚
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona着陸後、探査機のマストの上に位置するステレオカメラで撮影。 水平方向から63度も下に向けての撮影です。3本の脚のひとつが写っています。 (関連するアニメーション)
着陸成功に歓喜する飛行管制室
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
展開された太陽電池板
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
展開された太陽電池板
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona着陸後、探査機のマストの上に位置するステレオカメラで撮影。
北側、水平線方向の景色
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona着陸後、探査機のマストの上に位置するステレオカメラで撮影。 遠くに光るものは、着陸時に分離した物体の一部かもしれません。
着陸直後の画像
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona着陸直後、探査機のマストの上に位置するステレオカメラで撮影。 紫と赤外の2つのフィルターで撮影し、擬似的な色彩をほどこしたものです。実際の色彩ではありません。 たくさんの小石や、火星の高緯度地域に広く見られる地形模様がわかります。 (関連ページ:1 2)
着陸直後の画像
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona着陸直後、探査機のマストの上に位置するステレオカメラで 探査機近くの地面を撮影。 紫と赤外の2つのフィルターで撮影し、擬似的な色彩をほどこしたものです。実際の色彩ではありません。 火星の高緯度地域に広く見られる地形模様がわかります。 (関連ページ:1 2)
火星表面から約1mの高さの星条旗と ミニDVD
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona一般からの 応募による 25万人の名前を記録した ミニDVDも探査機に 取り付けられています。(DVDには こんな内容もおさめられています)
着陸地点の気温はマイナス80℃〜マイナス30℃(資料: 1 2)
以上は、着陸した日に撮影された画像から。
探査機の真下にこんなものが!
Credit: NASA/JPL-Caltech//University of Arizona/Max Planck Institute関節部があり、全体の長さが2.35mもある機械の腕 「ロボットアーム」の先の方(スコップの手前)には カメラがつけられています。 (ロボットアームの写真: 1 2)
そのカメラが、火星到着5日後にとらえたこの画像は、探査機の真下(探査機北側から南方向に向けての撮影)のようすです。 着陸時の噴射によって表面の土がふきはらわれ、なにやら白っぽい物体が姿をあらわしています。 岩でしょうか?それとも氷? これからの分析が楽しみです。
いくつかの噴射口が画面の上のほうに見えています。
探査機下の物体を拡大
Credit: NASA/JPL-Caltech//University of Arizona/Max Planck Institute同じく、ロボットアームのカメラで、火星到着6日後(2008年5月31日)に撮影した 探査機下の白い物体の拡大。
ロボットアームで地面を掘ってみました
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M Universityロボットアーム のカメラで、火星到着7日後(2008年6月1日)に撮影した地面。 ロボットアーム先端のスコップで テストのため、地面を掘ったはじめての跡です。
スコップにたまった火星の土
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Max Planck Institute先の画像のようにして、最初に採取された火星の土。ロボットアーム のカメラで撮影。カメラに付いている赤、緑、青の照明で照らされた色です。
右のほうに、白っぽい部分が見えます。これは、氷か塩のような物質かもしれません。 探査機の下に見つかったあの白っぽい物質と同じものではないでしょうか。
顕微鏡で見た直径3ミリの砂粒
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona地球以外の惑星では、これまでで最高の倍率で見ることになった「火星の砂粒」。一部カラー合成 (関連ページ)
分析器に入られようとする土のサンプル(スコップ内に見えます)
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University探査機の北側の地面から、2〜4センチの深さを ロボットアーム先端のスコップですくいました。 分析にかけられる最初の土のサンプルです。スコップにより、 分析器 に入れられます。 (上の画像には、分析器のふたが開いているようすも写っています) 分析器では、サンプルをオーブンで熱し、出てきた気体の成分を調べます。 (分析器にとりこまれたサンプルのゆくえ(動画))
火星到着11日後(2008年6月5日)。
分析器に注がれた土のサンプル
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Max Planck Institute火星到着12日後(2008年6月6日)に、 分析器 にふりかけられた火星の土のサンプル。 分析器の、 「ふるい」のついた取り入れ口あたりにサンプルの土が散らばっています。 分析器内にサンプルが入ったかどうか、 この時点ではまだ確認されていません。
ロボットアームのカメラで撮影。
分析器 の取り入れ口が並んでおり、2つの扉が開いています。(扉の長さは約10センチ) その間に入っている土は、大きな粒で分析器が詰まらないよう、 「ふるい」の上に乗っており、1ミリ以下の細かい粒だけが 分析器内に入るようになっています。 分析器内の 赤外線ビームを粒が遮ることにより、 サンプルが入ったことを確認できるようになっています。
火星到着14日後(6月8日)、 「ふるい」を震動させてみましたが、「ふるい」を通過したのは2、3粒程度しかありませんでした。 再度、「ふるい」を震動させてみるそうです。 (資料)
「ふるい」を繰り返し震動させたためか、あるいは、かたまりやすい土の性質が何日もの間に 変化したのか、いずれにせよ、ようやく8つのうちひとつのオーブンがサンプルでいっぱいになったようです。 (資料)
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University
いっぽう、火星到着18日後(6月12日)、 ロボットアーム先端のスコップで、さらに深く掘っています。 例の、白っぽい物質が見えていますが、浅いところだけに見えていることに注目!掘った跡は、幅22センチ、長さ35センチ、深さは最大(手前の部分)で7〜8センチあります。
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University/NASA Ames
チェシャ猫とニックネームが付けられた 多角形模様の地面 中央付近が掘られ、 その溝(トレンチ)には「スノーホワイト」というニックネームがつけられました。画像は、2つの溝「スノーホワイト1」(左)、「スノーホワイト2」(右)が写っています。 溝の深さは約5センチ、長さは30センチです。 掘ったあとの土の山が画面上のほうにできています。火星到着25日後(6月19日)、 探査機のマストの上に位置するステレオカメラで撮影。影の部分を、明るく強調処理しています。
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University
先の2つの画像に写っている溝(トレンチ)の位置関係です。複数画像の合成ですが、手前に探査機の一部が写っています。 探査機のマストの上に位置するステレオカメラで撮影。
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University
この画像は、 ステレオカメラによる 火星到着20、24日後(6月15、19日)の画像を切り替えて表示しているものです。 4日間に、溝の左下にあったサイコロサイズの氷(と見られる物体)が 気化したと見られ、なくなっています!(溝の上部にある、薄い氷の変化にも注意) (資料:1 2)
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University
こちらは左右に並べた画像です。
ベルギーのアーティスト Patrick Vantuyne さん による立体画像版もあります (赤青セロハンの立体メガネで見てください)左が 火星到着20日後(6月15日)、 右が 火星到着24日後(6月19日)の画像です。
それぞれ右上に、 氷のあった場所の拡大も示されています。黄色の線の長さは約1.7センチ。
この場所の 気温 (マイナス80℃〜マイナス30℃くらい) では、火星大気の主な成分である二酸化炭素の氷は、 固体のままではいられません。たちまち気体になってしまいます。 (二酸化炭素や水の状態図:1 2 3 4)
したがって、この氷はH2O の凍ったものであると考えられています。(資料)
火星の「白夜」(びゃくや)
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M Universityこの画像は、 ステレオカメラによる複数の画像を組み合わせた モザイク写真です。前景と空は、火星到着54日後(7月20日)撮影の画像。 太陽像は、火星到着46〜56日後の11日間に撮ったものです。 太陽の撮影は、火星の1日を24時間に切り分けた場合の、現地時間22時から02時の深夜に行われました。
火星での夏至が 2008年6月25日にありました。 この頃、火星の北緯約65度では、真夜中でも太陽が沈まなくなります。それよりも北にいくほど、夏至の日を中心とした 太陽が沈まない期間が長くなります。着陸地点(北緯約68度)では、2008年9月1日頃、太陽が沈むようになります。 最初は、地平線を太陽がかすめるように動いていくますが、やがて夜の時間が長くなっていくます。 2009年4月3日頃には、太陽が地平線上にのぼらなくなります。 (2009年5月22日に冬至を迎えます) 再び地平線上に太陽が姿を現すのは、3ヶ月以上あとの、7月11日頃になりますが、 太陽電池で電力を得ている「フェニックス探査機」は、探査活動に終止符を打つことになりそうです。 (資料: 1 2 3 4)
着陸地点における夏至(2008年6月25日)の太陽の動き
2008年9月1日、着陸地点における太陽の動き
2009年4月3日、着陸地点における太陽の動き
着陸地点における冬至(2009年5月22日)の太陽の動き
2009年7月11日、着陸地点における太陽の動き
いずれも Mars24 Sunclock で作図. 南を中央にしています。 目盛りは45度間隔.
スコップの裏側にある「電動やすり」
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
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Credit: University of Arizona
上から:2008年7月14日火星からの画像、スコップ断面図、探査機のエンジニアリングモデル の「電動やすり」部分(下2枚)
地面の下に広がった氷は、けっこう硬くて、機械の腕の先端のスコップでは、 なかなか採取することができませんでした。 そこで、スコップの裏面から少し出っ張った「電動やすり」(上の4枚の写真)を使うことになりました。 フェニックス探査機開発中、とくに硬い氷用にということで追加された道具で、まさに予想された状況となったわけです。
使用時には、スコップの裏側を地面に向け、モーターでやすりを回転させます。回転させながら、やすりの向きを、 ほぼ水平に近い角度から次第に傾けていきます。こうして、はぎとられた地面の物質は、やすりの開口部のすぐ内側に集められます。 そして、スコップの一連の動作によって、「はぎとられた物質」はスコップ後方から前方へと移動します。
「スノーホワイト」というニックネームがつけられた溝(トレンチ)の内部、最上層にあった土を 機械の腕で取り除き、溝の底を「電動やすり」で削ります。 うまくいけば、氷を多く含む土を分析器 にかけて、その成分を調べることができるでしょう。 (資料: 1 2 / 「電動やすり」を開発したハニービー・ロボティックス社)
上記のようにして採取された氷を分析した結果、 NASAは、 H2O が確認されたと、2008年7月31日に発表しました。 また、フェニックス探査機による探査を、当初の3ヶ月間から4ヶ月間に延長し、2008年9月30日まで 運用することも発表しました。 (資料: 1 2)
着陸地点から見た周囲360度の景色
- 地面の多角形模様や、スコップで掘った跡もわかります。
- 着陸後、数週間に撮影された400枚以上の画像から得られたものです。
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University
これまでに掘られた溝(青枠)とこれから掘る予定の溝(オレンジ枠)
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M Universityステレオカメラで撮影。溝にニックネームがつけられています。
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University
火星到着13〜36日後の2008年6月7日〜7月1日にかけて ステレオカメラで撮影した画像を 組み合わせて作成された立体画像。赤青セロハンの立体メガネで見てください。
左下に、スコップで掘った溝が見え、右下には探査機の太陽電池板が見えます。
地面の多角形模様もよくわかります。
最後の通信
太陽電池板を照らす日射時間も次第に短くなり、探査機の機器を動かすための充電が難しくなっていきました。 塵の舞う空や雲による日光の遮断、気温の低下という悪条件のなか、ついに、 2008年11月2日に受かった電波を最後に通信が途絶えました。
着陸後3ヶ月は機能する設計であったのですが、さらに2ヶ月もよけいに機能していたのです!
今後、着陸地点に冬が深まるにつれ、探査機には二酸化炭素(ドライアイス)の霜が積もっていき、 すっぽり覆われてしまうかもしれません。そんな過酷な環境に耐えられるとは思えませんが、 もしかすると、春がおとずれ、充電が再びできるようになれば、探査機は地球への通信をはじめるかもしれません。
研究者らは、今回得られた膨大なデータ(画像だけで25000枚以上)の分析に相当な時間を費やすことになるでしょう。 (資料: 1 2 3 )
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