閏秒のページ


地球の自転がおそくなっている!

      
     “閏秒”とは?

2009年1月1日の朝、08時59分59秒の1秒後には、普通は09時00分00秒になるのですが、今回は「閏秒」(うるう秒)というものがはいり、その1秒後が09時00分00秒になります。

「閏秒」が入れられるのは、今回で24回目です。

いったい、閏秒はなぜ入れられるのでしょうか?


私たちの生活リズムは、太陽の出没が基本になっています。
太陽が真南に来て、次に真南に来るまでの時間を「視太陽日」(したいようじつ)とよんでいます。

「視太陽日」の長さは一定ではありません。30秒くらいの変動があります。(資料: 「暦の科学」講談社 1984)

原因は2つあります。ひとつは、
地球の軌道が楕円であり、地球が太陽のまわりを一定の速さで進んでいないこと(地球から見れば、星座を背景にした太陽の動く速さが一定でなくなります)。そして、太陽は、天の赤道とは傾いた「黄道」(こうどう)上を移動しているためです。(天の赤道とは、地球の赤道を天球に投影したものです)
とくに2番目の原因が変動の大きな要素です。(資料: 「改訂・増補天文学辞典 地人書館 1991)

視太陽日の長さが短くなったり、長くなったりして、それが日々積み重なっていくと、太陽が真南に来る時刻が15分もずれてくるのです。

これでは不便だ、というので、長さが変動する視太陽日を一様にならした「平均太陽日」というものを考えます。1平均太陽日を24等分した時間を「平均太陽時」として日常生活で使うことにしたのです。(18世紀末〜19世紀初めにヨーロッパで広まりました。 資料: "Explanatory Supplement to the Astronomical Ephemeris and the American Ephemeris and Nautical Almanac" HMSO 1961)


「平均太陽日」や「平均太陽時」という考えは、地球の自転周期は一定であり、自転が速くなったり遅くなったりしない、という前提で成り立っています。

ところが、19世紀になると、その前提があやしいことがわかってきました。観測に基づく月の運動理論(時刻を与えると、月の位置が計算できる理論式)が、観測位置を正確に表せなかったのです。惑星についても同じことが示されましたが、月は天球上の動きが速いため、くいちがいが目立ちました。

その原因が、地球の自転の遅れにある、との考えが示されたのは19世紀中頃のことでした。「月による潮汐(ちょうせき)が地球の自転を遅らせている」というのです!
(フランスの天文学者ドゥローネイ(Delaunay)やアメリカの気象・海洋学者フェレル(Ferrelによる。フェレルの論文は1864年に書かれたのですが、出版は1866年でした。そのため、1865年のドゥローネイの論文が「月による潮汐が地球の自転を遅らせている」ことを最初に示したものとされています。"Tides: A Scientific History" Cambridge University Press 1999より)

月・惑星の運動理論の研究が進むほど、「地球の自転の遅れ」は確実になっていきました。
1927〜1928年ワレン・モーリスらが水晶時計(クォーツ時計)を発明。このような正確な時計の出現により、地球の自転の変化が調べられるようになり、1937年には季節による変動をも検出できるほどになりました。 (資料: "Explanatory Supplement to the Astronomical Ephemeris and the American Ephemeris and Nautical Almanac" HMSO 1961)

月が地球の自転を遅らせているとはどういうことなのか、つぎにかんがえてみましょう。


地球の自転周期は(季節変動などをのぞいても)、かなりムラがあるものの、しだいに遅くなっている傾向にあります

1627年〜1976年の月の位置観測のデータから、地球の自転は、100年間で、1日の長さ(自転周期)が0.002秒長くなる程度の遅れを示しています。
(資料: "Explanatory Supplement to the Astronomical Ephemeris and the American Ephemeris and Nautical Almanac" HMSO 1961)


たったそれぽっち! と感じるかもしれませんね。でも、100年の間に少しずつ1日の長さが長くなっていき、100年目で1日が0.002秒長くなるわけですから、100年間の平均では1日の長さが0.001秒ながくなっていくペースと見なせます。

したがって、100年間これが積み重なると、


0.001秒 x 365(日) x 100 (年) = 36.5秒


36.5秒ぶんも地球の向きがずれてきます。

1000年ではどうかというと、1000年間の平均では1日の長さが0.01秒長くなるペースになりますから、


0.01秒 x 365(日) x 1000 (年) = 3650秒 (約1時間!)


1000年で約1時間ぶんも誤差がたまってしまうのです!

地球の自転が遅くなっていくことを考えずに、1000年先のどこかの日の出の時刻を計算したとしましょう。実際にその時刻に日の出を迎えているのは15度(1時間に地球が回る角度)ほど東の場所、ということなのです。
実際の地球の自転は、一様に遅くなっているわけではなく、けっこうムラがありますので、以上の計算は「およそのはなし」と考えてください。


そこで、地球の自転に基づかない、もっと一様な時刻のシステムをつくろうということで、現在では「国際原子時」というものが設けられています。

セシウム133原子の出す特定の電磁波の波が、91億9263万1770回出るのに要する時間を、「原子時の1秒」と定めています。(セシウム原子時計国際原子時の話

原子時は正確でよいのですが、地球の自転と無関係なので、原子時を日常生活で使うと、やがてとんでもない時刻に太陽が昇ったり... ということになりかねません。

そこで、平均太陽時を使いながら、「1秒」は原子時の1秒を使おう、ということで落ちつきました。(1972年1月1日から採用。このシステムを「協定世界時」といいます) )


原子時の1秒をずっと使っていると、自転の遅れで、太陽が南に来るタイミングが遅れてきます。

そこで、ときどき「閏秒」を入れて、太陽の動きにあわせてやるわけです。

1999年以降6年間、閏秒が入れられることはなかったのですが、それまでは、1〜2年に1度、閏秒が入れられていました。閏秒が入れられる場合、その時期は、日本時間で1月1日09時00分00秒の直前か、7月1日09時00分00秒の直前です。



なぜ月が地球の自転を遅らせているのか、考えてみましょう。


月に近い側と、月から遠い側では、地球にはたらく月の重力の強さが違います。
月に近いほど月による重力は強くなります。


バネの部分部分にすこしずつ異なる大きさの力を加えてひっぱると、バネ全体はのびますね。
同じように、地球の海水全体も、月に近い方向と遠い方向にのびてしまいます。


月による干潮や満潮はこうしてできます。


地球は自転しているので、海水もひきずられます。
すると、月に近い「A」の海水は、(弱い重力ながらも)月をひっぱります。(実線の矢印)
この力の矢印を、月の軌道運動の方向と、その直角方向に分解してみると(破線矢印)、月が加速されていることがわかります。

実際に、月は、この加速と見られる影響で、1年で約3.8cm軌道半径が大きくなり、地球から徐々に遠ざかっていることがわかっています。(資料


と同時に、作用と反作用の関係で、「A」の海水は月からもひっぱられているわけです。
これは地球が海水をひきずる向きとは逆ですから、自転にブレーキをかける効果をもつことになります。







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