あいつぐ火星探査機


[火星探査の歴史] [宇宙開発読み物]
マーズクライメートオービター
マーズポーラーランダー

マーズクライメートオービター
火星周回軌道にはいる火星気象衛星のイメージ
打ち上げられた火星気象衛星

打ち上げのもよう(アニメーションGIF 752 KB): デルタ2ロケットの1段目にとりつけられたカメラが、切り放される補助ブースターや遠ざかる地球をとらえています。MPEG動画版(2.61 MB)はスロー再生しないと見づらいです。

火星の大気や気象現象を観測するため、NASAは、 火星気象衛星「マーズ・クライミット・オービター」を1998年12月12日03時45分51秒、フロリダ州ケープカナベラルからデルタ2ロケット で打ち上げました。

マーズ・クライミット・オービター(構造図:
(大型冷蔵庫くらいで高さ2.1m, 幅1.6m, 奥行き2m, 重さは629kg(291kgは燃料))

マーズ・クライミット・オービターの立体画
赤・青のセロハンをはったメガネで見て下さい。作画: Corby J. Waste, JPL)


マーズ・クライミット・オービターの火星までのコース(打ち上げの日付は当初予定のもの)

マーズ・クライミット・オービターの現在位置


火星をまわる軌道に入るのは1999年9月23日17時50分(探査機からの信号が地球に届くのは約11分後の18時01分)の予定です。この時刻から16分23秒間エンジンをふかしてブレーキをかけ、火星をまわる長細い楕円軌道に入ったのち、まもなく大気ブレーキを利用した軌道修正を始めます。

火星に最も近いところ約100kmくらいの高さになる軌道に入るため、火星上層大気によるブレーキが利用できます。2カ月ほどの間に約200周火星を周回し、しだいに軌道は縮まっていき、1999年11月22日頃は、最も遠いところが約450kmの高さになります。その後エンジンをふかして、12月1日頃、火星の両極地上空を通過する高度約420kmのほぼ円軌道になります。

☆ マーズ・クライミット・オービターの火星到着に関するNASA広報資料(253 KB 英文: Adobe Acrobat file; 読むためのソフト


マーズ・クライミット・オービターは、火星の大気や気象現象の観測のほか、12月4日に火星の南極地方に着陸するマーズ・ポーラー・ランダーからの通信を地球に中継したり、地球からの指令を着陸機に中継する役目もはたします。軌道修正したあとの初めの3カ月(2000年2月末まで)は、むしろ中継が主な仕事になります。



そのあと、2000年3月〜2002年1月までが気象観測を重点的に行う期間になります。火星の四季は約2年サイクル(687日で太陽を1周)なので、この期間中に四季の変化も観測できるはずです。その後は、今後の火星着陸機のための通信中継機としてまた活躍する予定です。


 マーズ・クライミット・オービター火星到着時のトラブル 

マーズ・クライミット・オービターから送られてきたデータはすべて正常のようでした。、予定どおり、主エンジンも点火しました。
ところが、火星の向こう側をまわって姿を現すはずの時刻になっても通信が回復しません。どうしたことでしょう?

火星接近にいたる6〜8時間のデータを点検したところ、火星への接近高度が予定よりもかなり低くなっていたことが判明しました。(原因は調査中)あまり火星のそばに接近すると、大気との衝突で探査機がこわれてしまうのです。

安全な高度は85km以上とされ、予定では約140kmの高度を通過するはずでした。ところが、実際には57kmの高度に達していたようです。おそらく、マーズ・クライミット・オービターは大気による摩擦や衝撃でバラバラになり、広い範囲に破片が散らばったものと見られています。


1999年12月3日には、火星南極地域にマーズ・ポーラー・ランダーが着陸する予定です。マーズ・ポーラー・ランダーからの通信をマーズ・クライミット・オービターが中継することになっていましたが、マーズ・クライミット・オービターが失われたため、1997年7月から火星を周回しているマーズ・グローバル・サーベイヤーを中継に使うことが検討されています。マーズ・ポーラー・ランダーは、おそいペースの通信であれば、直接地球と交信することができます。 (詳しくは、

NASA側の技術者らは、マーズ・クライミット・オービターのデータを、この探査機を製作したロッキード・マーチン・アストロノーティックス社の技術者チームから受け取っていたのですが、ロッキード・マーチン側ではデータを表示にヤード・ポンド法を使い、NASA側ではそれらデータを、メートル法による値と解釈していたことがわかりました。
このような初歩的なミスが原因で、マーズ・クライミット・オービターの飛行コースがそれてしまったと見られています。(詳しくは、を。ヤード・ポンド法による計量単位表

マーズポーラーランダー

1999年1月4日05時21分10秒には
マーズ・ポーラー・ランダーが打ち上げられました。

打ち上げ前のマーズ・ポーラー・ランダー(下に人がいるのがわかります)
打ち上げられたマーズ・ポーラー・ランダー

打ち上げのもよう(アニメーションGIF 1.38 MB): デルタ2ロケットの1段目にとりつけられたカメラが、切り放される補助ブースターや遠ざかる地球をとらえています) MPEG動画版(4.69 MB)はスロー再生しないと見づらいです。

火星南極着陸機 マーズ・ポーラー・ランダーの火星での想像図
組立中の写真
試験中の写真
構造図:; (上から見た図) (大きな図 1.16 MB)

マーズ・ポーラー・ランダーの立体画
赤・青のセロハンをはったメガネで見て下さい。作画: Corby J. Waste, JPL)


マーズ・ポーラー・ランダーの現在位置


幅3.6m、高さ1.06m、重さ576kgのマーズ・ポーラー・ランダーは、しだいに地球の軌道から遠ざかり、1999年12月4日05時00分頃、火星の南極地域の南緯72度〜78度、西経170度〜230度付近に、パラシュートや逆推進ロケットを使って着陸する予定です。大気圏突入時には、12の加速度や1650度Cもの高温にさらされます。着陸地点、火星現地の時刻としては朝4時20分頃にあたります。(探査機の火星接近MPEGアニメーション(2.07MB); 暫定的な着陸地点; 着陸段階の図解; 着陸までの秒読み

最終的な着陸地点の選定は、マーズ・グローバル・サーベイヤーによる観測データを使って、行われます。こちらをごらんください。

マーズ・グローバル・サーベイヤーが1999年6月10日に観測したデータから、以下のような着陸予定地点付近の画像が作成され公開されました。(1999年7月6日発表)これは地形の凹凸を示すもので、数字の単位はメートルです。

火星の南緯55度〜90度

マーズ・ポーラー・ランダー着陸予定地点付近

着陸予定地点付近の立体画像(地形の高さを20倍に強調

以上3枚: http://mars.jpl.nasa.gov/mgs/sci/mola/98lander.htmlより。
Credit: MOLA Science Team



今回の探査の目的は、火星の気候と水分についての調査です。火星の極地方は火星でもとくに寒いところですから、気体になりやすい水のような物質が見つかる可能性が高いのです。また、過去の気候変化を調べるてがかりが、極地の堆積物に見つかるかもしれません。
そんな期待から、今回極地方への着陸が計画されたのです。打ち上げのタイミングから、北極ではなく、南極側が選ばれました。着陸地点は、南極点から1000kmも離れていません。二酸化炭素が凍った極冠の端ちかくの場所にあたります。

火星着陸10分前、火星大気圏に突入する直前(高度959km)に、(太陽電池板の裏につけられていた2個の小型探査機も分離します。マーズ・ポーラー・ランダー本体から約200kmのところに着地すると見られています。地面に激突するときの加速度は、8万もあります!

火星にめり込む2個の小型探査機

バスケットボールくらいの大きさの、2つの小型探査機の機体の半分は、地中貫入機として、火星面に数10cm〜1mほどもぐり込むと予想されています。約50時間機能する設計になっていますが、もっとながく働くかもしれません。

 この2つの小型探査機の名前を募集していました。(締め切りは1999年4月30日)


2つの小型探査機「アムンゼンとスコット」のページ



マーズ・ポーラー・ランダー本体でもロボットアームをつかって火星の地面から土壌サンプルを採取し、水分あるいはその痕跡さがしが行われるほか、火星の気象観測なども行われます。火星の表面ではどのような音が聞こえるのか、というおもしろい実験も予定されています。(実験で使われるものと同じマイクロフォン(Robin Weiner of the Associated Pressによる写真)幅約5cm、厚さ約1cm、重さ50g足らず)火星に小型マイクを運ぶ計画について詳しくはこちら


☆ マーズ・ポーラー・ランダー着陸時のアニメーションがあるCNN Newsのページ


着陸から1時間ほどで、着陸地点の画像が送られてくるでしょう。
マーズ・ポーラー・ランダーの設計時期は、エアバッグを使って着陸に成功したマーズ・パスファインダーの前でしたので、1976年に火星に着陸したバイキング1号・2号の着陸機と同様、逆推進ロケットを使って着陸時の減速を行います。

火星到着時に、火星の南半球は春の終わり頃になっています。この頃、着陸地点では太陽が1日中地平線上に出ています。気温は、夏の最高温度でマイナス5℃、夏の最低でマイナス60℃と予想されています。
季節が進むにつれ、太陽の高度が低くなっていき、太陽電池による電力も弱まります。
秋が近づくと、機器を温めるための電力消費が増えていきます。エネルギーをなるべく消費しない省エネモードの時間が増えていきます。

ついには、探査や通信に必要なエネルギーが得られない状態になり、探査計画が終了します。着陸から87日間くらいもつと見られています。 この頃、着陸地点では、(地球でいえば南半球は立秋のころ)、最高温度でマイナス30℃、最低でマイナス90℃と予想されています。
冬を越せるようには設計されていないのですが、運が良ければ、2001年、火星の南半球にふたたび春がやってきたとき、マーズ・ポーラー・ランダーが息をふきかえすかもしれません。



☆ 今回の火星探査機に関するNASA広報資料(1.29 MB 英文: Adobe Acrobat file; 読むためのソフト
☆ 今回の火星探査に関するNASA広報資料(0.15 MB 英文: Adobe Acrobat file; 読むためのソフト


(Photo Credit: JPL/NASA/Caltech)


☆  マーズ・ポーラー・ランダー指令室からの生映像


1999年12月4日05時00分39秒(地球での信号到着時刻では05時14分45秒)に、南緯76.1度、西経195.3度に本体が着陸し、ほぼ同じ頃、小型探査機「アムンゼンとスコット」が南緯75.0度、東経163.5度に衝突したと見られています。2つの小型探査機はランダー本体から約60km北にあるもようで、「アムンゼンとスコット」は、たがいに数km離れた場所にあるようです。

着陸直後の信号が地球側で受信できなかったため、2000年1月17日(アメリカ現地時間)まで、通信回復の試みが続けられましたが、回復はなりませんでした。 1999年12月16日から、マーズ・グローバル・サーベイヤーを使った、着陸予定地点の捜索も開始されています。マーズ・ポーラー・ランダーになにが起こったのか、その手がかりが得られるかもしれませんが、撮像できたにせよ、あまりにもかすかで小さな像でしかないはずです。画像のノイズのなかから見つけるのは困難です。この捜索は2000年2月上旬まで続けられる予定です。最新の情報はこちらで。

公式には断念されたマーズ・ポーラー・ランダーとの通信ですが、失敗の原因について手がかりだけでも得られないかと、信号受信の試みが行われています。

マーズ・ポーラー・ランダーからの信号を受信しようと、1999年12月と2000年1月に、カリフォルニア州、スタンフォード大学口径45mのパラボラアンテナが火星に向けられました。

微弱な信号の場合、すぐには判別できません。何週間ものデータ解析を行い、12月18日と1月4日に受信したデータに、かすかな「人工的な信号」が見つかりました。この信号が本当にマーズ・ポーラー・ランダーからのものかどうか断定はできず、地球のどこかからの電波かもしれませんでした。

でも、このことでマーズ・ポーラー・ランダーがまだ生きている可能性が出てきました。

世界各地の電波天文台が、マーズ・ポーラー・ランダーからの信号受信に力を貸しましょうと、申し出ています。そのなかには、イギリス、ジョドレルバンク(マンチェスター大学)の口径76mアンテナや、オランダ、ウェスターボルク天文台の口径25m14基のアンテナ群、イタリアのボローニャ近郊のアンテナ群などが含まれています。


マーズ・ポーラー・ランダーは、着陸の際、本体から3本の着陸用の足を展開したはずですが、センサーが「着地した」という誤った信号を出してしまい、エンジンがそこで止まり、40mくらいの高さから地面に墜落した可能性が高い、という調査結果が発表されました。詳しくはCNN ニュースFLORIDA TODAYNASAレポートをごらんください。



(資料源: マーズサーベイヤー98ホームページマーズ・ポーラー・ランダーのホームページNSSDCマーズ・ポーラー・ランダーのページ

★ 火星の南極画像
★ マーズ・ポーラー・ランダーの1/24スケール精密紙模型の製作
★ マーズ・ポーラー・ランダーと2つの小型探査機に関する解説資料(英文: Adobe Acrobat file; 読むためのソフト
★ マーズ・ポーラー・ランダーに関する資料ページ


☆ これまでの火星探査について
☆ 最近・将来のNASAの火星探査計画について(1)
☆ 最近・将来のNASAの火星探査計画について(2)
☆ このページMars in the Solar Systemで、火星と他の惑星の大きさ比較ができます。


あなたの名前を記録したCD-ROMを火星へ!


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