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古美術の著作権

[天文民俗学]

[生活の中の科学]

 

 


 質問:作者の死後明らかに70年(※1)以上たっており,著作権が切れている古星図、 油絵,版画などの著作物を、その所有者の承諾なしに,HPにて公開できるか?

 答え:非営利のHPなら、官民を問わずできます.(2000.5.13現在)



■古美術などの所有者の権利

 昭和59年から現在までの判例によれば、古美術の所有者の所有権は、 著作物の正当な使用をさまたげられません.たとえばある美術館の所有する 作者死後70年以上経過した古い絵画が、連絡なしにどこかの非営利のHPで使われていた,この場合美術館は そのHPに使用のさしとめや苦情をいう権利はありません.
 所有権は、その実物を公開したり、奥にしまったり、貸したりすることが できるだけで、電子データや写真になったものに対しては何ら効力は ないというのが,ここ20年の一貫した解釈となっています.
(判例ではすべて美術品の所有者が敗訴しています.)

 ただし、その写真や電子データなどを絵はがきにしたりして販売するなどで「利益を得ている」 場合は別で、所有者は差し止め請求する権利があります.(著作権法第46条)


■古美術などの写真の著作権

 新聞や雑誌、本にあるほとんど全ての写真は著作物です.ですので、著作権ぎれ の古美術の写真が雑誌にのっていたとしたら、それは自由に使用はできません. その雑誌と撮影者の許可が必要です.

 しかし著作物は創造したものでなくてはならないので、絵画の写真の場合、 ただそのまま平たく写した写真は著作物ではなく,複製にあたります(判例より).したがって撮影者に使用の許可をえる必要はありません. また、著作物ではないので著作権の一部である版権が発生せず、もし撮影者が出版社に版権を売っていたとしても,出版社に版権はないことになります.

 しかし、出版社には編集著作権がありますので,断ったほうがいいと思われます.(ここ訂正、Jiro Kondo様ありがとうござました). 実は編集著作権は,記事の選定や並べ方、全体構成とかを創造物とみる考え方なので、 通常は単体の写真に編集著作権は影響しないものなんです(^^;). じゃなぜ断るのかというと、 この件は私がしる限り判例がないので、念のためということです. 判例がないものは念のため作戦の方が安全です.

 以上は絵画などの平面のものの写真の場合です.立体になるとまったく話が別になります.
 彫刻などの立体の対象の場合は、すべての写真が著作物になります.カメラのアングルとかー光のあたりかたなんかが、創造になるのだそうです. ですので、立体の美術品は著作権ぎれでも、その出版社と撮影者の両方に使用の 許可を求めなければ使用できません.
 写真の場合は、作者の死後70年ではなく、その写真が公開されてから70年が保護期間で、それより年代がたつと作者が生きていても著作権ぎれとなります.
 また版権(出版権)は契約書に明記してない場合は最初の出版の日から 3年で切れます.


■著作者人格権は、永久に消えません

 著作者人格権は死後70年たっても切れません.これは何かというと、その美術品や写真がその人が作ったものだ、ということをどこかに表示しろということです.
 作者の表示の他、掲載雑誌の名称と撮影者(自分でない場合)の表示が必要です.あと、マナーとして所有者の表示も当然すべきでしょう.ついでに法律上意味はないですが,謝辞もいれておけばさらに好感度アップ.

追記:
 もしかして気づかれた方もおられるかもしれません.著作者人格権には もう1つ、同一性保持権,トリミングや加工をするな権があるのです. これが超やっかいです.
 作品そのものの美しさを表現するべく、著作権ぎれ 画像をデジカメ最高解像度モードで撮影、HPに掲載したとしたら?

 まるで本物のような美しい絵がHPでタダで見られることから、 その美術館の利益をそこなうかもしれない(少しでも).または画集を だした出版社があるとしたら、利益を損なうかもしれない.
   ↓
 それじゃ、所有者や版権をもっているところに迷惑をかけないよう、 画像を劣化させて掲載すればいいではないか?
   ↓
 いや、それではその絵の美しさがそこなわれ、著作者人格権侵害と なるのではないか.
 あれ、すると「サムネイルを作る」こと自体、著作者人格権の 損害ではないのか?
   ↓
 やはり著作者に「画像を劣化させて掲載してよいか?」の許可をとろう.えーと......、 著作権切れ美術品の著作者人格権の所有者ってだれなのよ!?
   ↓
 少なくとも所有している美術館ではありません.
 えーと...あった!著作権法第59条、著作者人格権は本人にしかなく、 相続も譲渡もできません.作者が死ぬと消滅するのです
 え?するとその絵の著作者人格権ってもう存在しないの?
   ↓
 しかし!!もし作者が生きていたら気分を害するような取り扱いは, してはならないと、次の60条にあります.これが著作者人格権が永久に 消滅しないとされる所以ですね.あ,でも作者が気分を害さないだろうと 想像される行為はOKだそうです.
   ↓
 はいこの場合の画像劣化はいたしかたないもので、 作者も気分を害さないと私が思いますので (といいますか、それよりも美術館の利益を 損なうとみられる方がはるかに怖い), 劣化して展示させていただきます.
 ..でもほんと、これでいいんですか?
   ↓
 結論は研究者もだしてません(^^;).だれもしらない......


■実際のところ.....

 以上、法的な解釈と判例の紹介でしたが、実際は所有者の力はもっと 強いように思います.勝手にHPに使われるのがいやだとしたら、いくらでも 妨げる方法があります....図版出版をやめちゃうとか,他に貸し出さない、撮影可だったのを 不可にする....etc.
 著作権法の精神では、「著作権ぎれの美術品は人類の財産」なんですが、 自分の所有物を勝手にあちこちのせるな!という持ち主の気持ちもわかります.
 この件は法学者間でも多少問題になってます.現実には 非営利の研究者ですら利用しにくいという....それは仕方ないのかなという 気もしますが,うーむ?法学者の検討を待ちましょう.

 また,画像使用の申請書がある法人は、それを書けばご利用OKという わけなので、良心的なところです.その気持ちに応えて非営利の使用でも 申請書くらいは書きましょう.ついでに謝辞も.誠意には誠意を もって返すがマナーかなと思います.

 問題は、著作権ぎれ画像でも,使用者が良心的に事前に使用のお願いをしたら、 有料だったとか、許可されなかったとか、理事会での審議が必要とか、 の場合ではないかと思います.
 法律上は、それらを無視して使用してもぜんぜん問題ないわけなの ですが,先方はそうは思っていない(たぶん著作権法も判例も知らない)..... HPへの掲載という,どうでもいいことでトラブルはいやですよね. そういうところの 画像は使わないにこしたことはないということになり、結局使用できないという ことになるわけなのでしょう.

 この古美術の著作権の解釈と判例が、あまりに認知されてない、というのが 実際使えない原因じゃないかなと思います. 私もつい先日初めて知ったのですから.

 
著作権法は作者の権利を守るとともに、公開情報を広く公正に使用できるようにするということも補償する法律であったはずです. 公正な使用を 制限することもまた著作権法違反なのに


◇著作権ぎれ美術品の持ち主が,使用者に請求した使用料の高額な例

 私が知っている,著作権ぎれ美術品の使用料中の最も高額の例...大英博物館の1アイテムにつき90ポンド(約14000円).しかし日本の一部の 文化財などはもっと高額だそうです.利益を得ていない使用でも、ほとんどの 方は支払っているみたいですので、法律よりも所有者の力は現実には大きいようです.


■結論

 美術館や博物館は、著作権法は,きちんと全部読んで下さい.心よりお願い申しあげます. それでかなりのトラブルはなくなるはずです.最新版はここです.


■インターネットの著作権論のHP

 今が旬?非常に多くのHPや解説記事がありますね.
 詳しくはこちら. またインターネット著作権の総合解説はこちら




★付録1:リンクは許可なくはってよいか?

 答え:よいです.法律上は問題ありません.
 これはもう早期のアメリカ内務省の機関が「リンクはいわば所在地を表示するという意味なので、勝手にはっても法律上問題なし」の結論があるので、 日本の文化庁でも同様の見解がだされているし、あまり問題ないと思います.
 日本の法学者間でも、そもそもリンクしあってるのがインターネットなんだから,HPを開いた時点でそれは了承したものと考えられる、という解釈が一般的です.

 もし文句言われたら(法律上文句いう権利はないんですが)マナーとしてリンクをはずせばよいのです.天文民俗ページのあのリンクの山は、ほとんど全部 無断リンクです.苦情がきたのはアクセスが多いと重くなるライブカメラの1カ所のみです.すぐリンクをはずしたらお礼のメールをいただきました.
 マナーとして,リンクフリーと明記してないとこには事前にお願いメールを 送るのがよいでしょう.

★付録2:引用ってどこまで可能?

 年々厳しくなっているのが引用のあつかいですネ.引用部分があくまで従で 自分の著作部分が主であるという条件の他、どうしても必要な場合 というのが特に重視されてきています.たとえば、地域のニュースをのせたりするページで、 **の花が花盛りという記事で、ある植物図鑑からその花の項目だけ掲載した, という例でも、引用にあたらず許可が必要である、という解釈です.
 HPの世界では、ほとんどの場合引用が不可能と思っていた方がいいかもしれません.

★付録3:アニメ作品やゲームのキャラクターなどの場合

 古美術の話から,いきなり俗っぽくなりましたが、これも解釈の骨子がだいたい できてきているので、ついでに掲載します.
 まず、キャラクターは意匠登録がある場合、意匠として保護されます. ほとんどのアニメやゲームは登録されています. カットや似顔絵は似てる似てないにかかわらず複製にあたり、許可無くHPで公開することはできないですし、創作での名前の使用もできません.
 また意匠登録がなくても、ゲームの絵などはもちろん創造的なものなので、 著作物です.キャラはもちろん,キャラ以外でも意図して似たような絵をかくと、複製とみなされ、著作権法違反です.

 しかしながら、なんかそういうHPいっぱいあるんですけど?と思われる 方も多いと思います.この現象は、著作権法違反が「親告罪」だからです.
 違法状態であっても、被害者が届けをださない限り、処罰することができない ということです.今はゲーム会社さんやアニメの制作者が、「大目に見て あげている」という状態なのです.違法には変わりありません.

 製作側では、「これこれこういう条件なら、HPにキャラの似顔絵のせても いいですよ」という条件を表明するところも増えてきました.その反面、 任天堂がポケモンのキャラ使用の同人グループを提訴したポケモン事件など、 あまりにイメージを壊しすぎているHPについては、伝家の宝刀をふるう 製作側も徐々に増えてきています.ただ,ファンがついてくれるのは制作者にとって うれしいことと思われますので、そのへんの綱引き具合が微妙のようです.


 ※1:今の著作権法では著作者の死後50年が保護期間ですが、国際条約にあわせて 70年へと移行が進められています.

    2000年7月14日  (財)横浜市青少年科学普及協会 出雲晶子

 

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