はまぎんこども宇宙科学館/(財)横浜市青少年育成協会


重力レンズのページ - 2008.1/17更新
プラネタリウム番組「アインシュタインの宇宙」投影期間 1999年4月13日〜8月31日


一般相対性理論

アルベルト・アインシュタイン
http://www.astro.virginia.edu/~eww6n/bios/Einstein.htmlより)

アルベルト・アインシュタイン(1879-1955)が1916年に完成、発表した一般相対論がきっかけとなり、重力レンズ研究の歴史がはじまります。
一般相対性理論では、重力を、「力」としてでなく「空間の幾何学」に置き換えた点が画期的でした。物体のまわりに「空間」のゆがみができ、空間を最短距離で進む光(電波なども)が曲がってしまうことが示されたのです。物体が重いほど、また、物体のそばであるほど空間のゆがみがひどくなります。

アインシュタインは論文の中で、太陽の縁をかすめる星の光は進路が曲がることを予言しました。その角度は1.75秒。アメリカの有名な天文学者ジョージ・ヘールは、皆既日食の際、太陽近くにみえる星の位置を観測すればよいことを提案。早速イギリスのアーサー・エディントン率いる観測隊が1919年5月29日の皆既日食(南米・アフリカで見られた)の観測に派遣されました。(ギニア湾プリンシペ島とブラジルのソブラル)

その結果はほぼアインシュタインの理論どおりで、星からの光が曲げられたのです。このことによって、アインシュタインの名と一般相対論の評判がいちやく世界に広まったのです。

1919年5月29日の皆既日食の写真1922年オーストラリアでの日食についてとそのときの観測結果を報じた電報

☆ 重力と光(重力なし、ニュートン力学による近似、一般相対性理論という3通りの光線の曲がり予測)

★ 1919年の皆既日食の観測精度について、過大評価しないよう注意をうながしている論文もあります。



重力レンズの提唱

同じ1919年、イギリスの物理学者オリヴァー・ロッジは、重力レンズによって天体の像が複数見えることを初めて指摘しましたが、注目されませんでした。

1936年には、アインシュタイン自身が、観測者と2つの星が一直線上に並んだとき、近い方の星の重力レンズ効果によって遠方の星が「リング状」に見えると発表しました。こんにち、こうしたリング状の重力レンズ像を「アインシュタイン・リング」とよんでいます。

また、スイス(アメリカで活躍した)の天文学者フリッツ・ツヴィッキーは、2つの銀河が同じ方向にみえる可能性を指摘し、重力レンズの観測はまじめに考えられるべきだと主張しました。

しかし、重力レンズ(ブラックホール銀河など)と背景の天体(クェーサーなど)が一直線上に並ぶ確率はあまりにも小さく、重力レンズ現象が実際にみつかることはないと、ほとんどの天文学者は考えていました。 多くの天文学者の予想をうらぎって重力レンズが発見されたのは、アインシュタイン生誕100年目の1979年のことでした。

重力レンズ像の現れかた

もし重力レンズが発見されたとしたら、どのような像に見えるか、という詳しい研究が1964年に発表されています。そうした研究によれば、重力レンズとなる天体がおおきな広がりをもたない場合には、重力レンズ像は2つできることが示されています。 銀河のような広がりをもつ天体が重力レンズになる場合には、3つ以上の像が現われることもあります。かなりぴったり一直線上に並べば、アインシュタイン・リングができます。


(図の参考: 福江 純「宇宙の蜃気楼 重力レンズ」(パリティ 1991年12月号))

広がりをもたない重力レンズの実験は家庭でも簡単にできます。重力レンズに似た屈折効果を示すのはワイングラスの底です。ワイングラスの底を通して、ペンライトの光を見ると2つのゆがんだ像やリング状の像が見えます。

ワイングラスとペンライトで重力レンズの実験

ワイングラスの底から照らして見る

リングになったり 2つの弧が見えたりします

★ アインシュタインの似顔絵の前を強力な重力源が横切る(MPEG動画 120KB)
(By Corvin Zahn ; The Homepage of the TAT より)

★ Photoshop や、フリーソフトの IrfanView などで利用できる重力レンズ像作成フィルター作例

★ すきな画像のURLをいれると重力レンズ像を作ってくれるページ

(重力源の位置や質量も変化できます。作例



重力レンズの発見

おおぐま座のクェーサー 0957+561A,Bが見つかったときは驚きでした。この2重クェーサーは角度の6秒(満月の1/300)しか離れていなかったのです。2000個ほどのクェーサーが現在発見されていますが、全天にほぼ一様に分布しているので、平均すれば、北斗七星のマスに2、3個ある程度なのです。(写真の、中央上下に並んだ赤い丸がその2重クェーサーです。(電波による観測))

1979年3月29日、キットピーク国立天文台の口径2.1m鏡でこの2重クェーサーのスペクトルが観測されました。2つのスペクトルはまったく同じものだったのです! 翌年には、パロマー天文台の5m鏡の観測で、Bに近い方の縁に「重力レンズ天体」が発見されました。この「ふたごクェーサー」までの距離は51億光年ほど。重力レンズ天体までは約19億光年とみられています。

1987年9月には、VLAの観測でしし座にアインシュタイン・リングも見つかったのです。1988年には、4つ子クェーサーが発見され、1990年4月に軌道に上がったハッブル・スペーステレスコープによって「アインシュタイン・クロス」と呼ばれる4重像も観測されました。




左から
1: 1994年8月に、大西洋カナリア諸島、ラパルマ島にある口径4.2mの「ウィリアム・ハーシェル望遠鏡」がとらえた「2237+0305 アインシュタイン・クロス」(Credit: Michael Irwin)
2: 1997年7月1日に、三重県松坂市の村林史郎さん口径35cm望遠鏡でとらえた「2237+0305 アインシュタイン・クロス」(写真提供: 村林史郎)
3: ラパルマの別の望遠鏡、口径2.5mの「ノルディック光学望遠鏡」が1995年10月にとらえた「2237+0305 アインシュタイン・クロス」(画像処理: Dan Long and Ed Turner. 4枚のうち、左上が生画像。右上が画像処理し鮮明にしたもの。左下が重力レンズ銀河。右下が重力レンズ像。 http://astra.astro.ulg.ac.be/themes/extragal/gravlens/tigl/engl/figure1.htmlより。
4: ニューメキシコ州のアパッチ・ポイント天文台口径3.5m望遠鏡が1998年11月3日にとらえた「2237+0305 アインシュタイン・クロス」 http://www.astro.princeton.edu/~elt/2237.htmlより。

2237+0305 アインシュタイン・クロスは、ペガスス座にあります。(図の×印)
1950年分点の赤道座標22h37m, +03d05'で、2000年分点では22h40m, +03d21'になります。
村林史郎さんの「小口径望遠鏡による重力レンズ天体の撮影〜ある高校天文部の活動報告」が日本天文学会発行の「天文月報」1998年7月号に掲載されています。(村林史郎天体観測所が NGC 1637銀河にとらえた超新星 SN 1999em の画像はこちら




重力レンズによって光が屈折しているようすが実感できる写真がハッブル・スペーステレスコープで撮影されました。

銀河団エイベル2218(1994年撮影)
写真説明(英文)) Credits: W.Couch (University of New South Wales), R. Ellis (Cambridge University), and NASA
銀河団エイベル2218(2000年撮影)
写真説明(英文)) Credits: NASA, ESA, Andrew Fruchter (STScI), and the ERO team (STScI)
りゅう座の方向、およそ20億光年の距離にある、エイベル2218という銀河団は、銀河の大集団です。その強力な重力によって、背後にある、もっと遠方の銀河の形が細長く変形されています。像が拡大されていたり、明るく見えていたり、まるでズームレンズをのぞいているようです。とくに大きく、明るく見えているものは、エイベル2218に属する銀河です。

1枚目と2枚目の写真では、写っている画面の向きが180度くらい違います。見比べたいかたは、どちらかの写真を約180度向きを変えるとよいでしょう。


次の画像も、ハッブル・スペーステレスコープで撮影された別の銀河団です。

銀河団エイベル16892002年6月撮影
写真説明(英文)) Image Credit: NASA, N. Benitez (JHU), T. Broadhurst (The Hebrew University), H. Ford (JHU), M. Clampin (STScI), G. Hartig (STScI), G. Illingworth (UCO/Lick Observatory), the ACS Science Team and ESA
おとめ座の方向、およそ22億光年の距離にある、エイベル1689という銀河団は、銀河の大集団です。その強力な重力によって、背後にある、もっと遠方の銀河の形が細長く変形されています。像が拡大されていたり、明るく見えていたり、まるでズームレンズをのぞいているようです。とくに大きく、明るく見えているものは、エイベル1689に属する銀河です。(画面に50万光年の長さが記入された同じ画像や この解説を理解するためのMPEG動画(5.4MB)もあります)


普通では暗くてみえないような遠方の天体を、重力レンズを使って調べることもできるわけです。そのようにして発見された最も遠い銀河が次の画像にあります。

最も遠い銀河
これもハッブル・スペーステレスコープで観測されたものです。
おおぐま座にある銀河団CL1358+62 が1996年1月13日に観測されました。四角で囲まれた部分が、最も遠い銀河です。重力レンズで三日月のような形にゆがんでいます。遠いこの銀河から私たちの間に存在する宇宙の塵によって青い光が散らされてしまったため、銀河の色が赤くなっています。

この銀河は、ハワイのケック天文台からもスペクトルが観測され、距離に関するデータが得られました。宇宙の年齢が140億年としますと、この銀河までは130億光年の距離となります。(重力レンズになっている銀河団までは50億光年ほどの距離です) 宇宙誕生からあまりたっていない初期の銀河が見つかったわけです。

最も遠い銀河(拡大)
写真説明(英文)) Credit: Marijn Franx (University of Groningen, The Netherlands), Garth Illingworth (University of California, Santa Cruz), and NASA
上の写真の、「最も遠い銀河」の部分を拡大したのがこの写真の右上です。ぽつぽつしている点は、活発に星が生まれている領域です。右下は、重力レンズによるゆがみがないとした場合の姿です。


最も遠い銀河!
銀河団エイベル2218による重力レンズ左の写真は1999年撮影。は2000年撮影)
写真説明(英文)) Credit: NASA, ESA, Richard Ellis (Caltech) and Jean-Paul Kneib (Observatoire Midi-Pyrenees, France)

りゅう座の方向、およそ20億光年の距離にある、エイベル2218という銀河団は、数千個の銀河から成る銀河集団です。その強力な重力によって、背後にある、もっと遠方の銀河の形が変形されます。像が拡大されたり、明るく見えたり、まるでズームレンズをのぞいているようです。とくに大きく、明るく見えているものは、エイベル2218に属する銀河です。

上の写真のうち、左の写真の、矢印(あるいは枠)で示された部分の詳しい観測画像が右上に示されています。

赤みを帯びて写っている2つの銀河は、ハワイのケック天文台からもスペクトルが観測されました。スペクトルが同じであることから、重力レンズによってできた2つの像であることがわかり、さらにスペクトルのドップラー効果から、距離に関するデータが得られました。宇宙の年齢が140億年としますと、この銀河までは134億光年の距離となります。宇宙誕生からあまりたっていない初期の銀河を見ているわけです。

この銀河の大きさは約500光年で、銀河系の直径約10万光年から比べるとたいへん小型です。初期の宇宙のこうした小規模な銀河同士が合体しあって、現在見られるような銀河になったと見られます。

http://www.stsci.edu/より)

☆ 同じくらい遠い銀河の発見ニュース:こちら
すばる、最も遠い銀河を発見(2003年3月19日)
続・すばる、最も遠い銀河を発見(2003年11月5日)

最遠天体の観測ニュースが出るページ



クエーサーの重力レンズ像
写真説明(英文)) Credit: Christopher D. Impey (University of Arizona)
PG 1115+080 というクエーサーしし座の方向にあり、地球からの距離はおよそ80億光年)が、地球との間にある楕円銀河(地球からの距離はおよそ30億光年。各画像の中央に見えます)の重力によって、4つの像に分かれて見えます。そのうち2つはほとんどくっついて見えます。

ハッブル・スペーステレスコープの赤外観測装置でとらえた画像(左)のうち、クエーサーの4つに分かれた像と、強力な重力源の楕円銀河の像をとりのぞいたものが右の画像です。
重力レンズによってできた、クエーサーのリング像が浮かび上がっています。

http://www.stsci.edu/より)



アインシュタイン・リング
イギリス各地にある電波望遠鏡からなる観測ネットワーク「マーリン」(MERLIN)では、はるか遠方の電波源の観測を行っていますが、弓型をした電波源 1938+666 を発見しました。左下がその電波観測画像です。

この天体を、地球周回軌道をまわる「ハッブル・スペーステレスコープ」で観測した 1938+666 の赤外線像が右上のまるい形です。

地球と遠方の銀河の間に、別の銀河があり、この3者がほとんど一直線に並んでいます。このため、遠方の銀河が出す電波や赤外線を含む電磁波が、途中にある別の銀河の重力で曲げられてリング状に見えているのです。このようなリングを「アインシュタイン・リング」とよんでいます。
途中にある銀河がリングの中心に明るく見えている点です。

電波を強く出している部分は、直線上からわずかにずれているために、完全なリング状にはなっていませせん。
不完全なリングも含め、銀河による重力レンズは1998年当時、20以上見つかっていましたが、これほど完全なアインシュタイン・リングは確認されていませんでした。

アインシュタイン・リングの見えるわけ
上は、遠方の銀河、途中の銀河、地球が一直線に並んだ場合。遠方の銀河からの光が途中の銀河によって曲げられリング状に見えます。
下は、一直線上からすこしずれている場合。3つの像ができています。

(以上2つの画像は MERLIN Press Releaseより)


8つのアインシュタイン・リング
Credit: NASA / ESA / A. Bolton (CfA) / and the SLACS Team

8つの画像の、それぞれ中心部に写っている黄色っぽい部分が、およそ20億〜40億 光年かなたにある 巨大な楕円銀河 です。そのさらに2倍も遠方にある 銀河からの光が、手前の 巨大楕円銀河の重力で曲げられ、 アインシュタイン・リングとして観測されています。こうした、銀河による重力レンズは、2005年の時点で100個以上見つかっています。 (資料


2重のアインシュタイン・リング2006年11月3日の観測
Credit: NASA, ESA, and R. Gavazzi and T. Treu (University of California, Santa Barbara), and the SLACS team

しし座の方向、 約30億光年のかなたにある 大型の銀河 の重力によって、 その背後にある2つの銀河(それぞれ、約60億光年、 約110億光年のかなたにあります)からの光が曲げられ、 弓型の像にゆがんでいます。

右の画像は、拡大したものですが、中心にある大きな銀河 の光を取り除いた ため、2重のリング(外側の淡いリングがより遠方の銀河からの光)がよくわかります。3つの 銀河が、ほぼ正確に一直線上にあるわけで、 きわめてまれな例でしょう。 (資料




遠方の銀河の6重像
http://www.aoc.nrao.edu/pr/sixlens/lensgraphics.html より
CREDIT: Rusin et al., ESA, STScI, NRAO/AUI/NSE

ハッブル・スペーステレスコープがとらえた遠方銀河の6重像(白く写っている天体が6つあります)です。ひとつの銀河が、重力レンズで6重像になっている、という発見はこれが初めてです。
うしかい座の方向、110億光年以上の距離にある銀河からの光が、ほぼ同じ方向の約70億光年の距離にある、3つの銀河(オレンジ色に見える天体)の重力により曲げられ、6つの像になっています。(資料



マイクロレンズ

天体の運動(重力の影響を受けている)の観測と、光で観測できる天体の量を 比べると、宇宙には、光で見えていない重力源が、見えている量の9倍はあると 考えられています。この「見えないなにか」の正体はわかっていません。

わたしたちの住む銀河系にもこの「なにか」が満ちています。ある研究者は、暗くて観測にかからない褐色矮星や巨大惑星ではないかと考えています。これらが遠方の天体の前を横切ると、規模の小さい重力レンズ効果(マイクロレンズ効果)を生じます。屈折により突然、遠方天体の明るさが増す! というわけです。

こうした現象の観測をすすめている研究グループもあります。(詳しくはこちら



重力レンズで探る宇宙国立天文台による)
☆ 重力レンズによる画像集 ; ; ;
☆ 重力レンズのホームページ; ;
☆ 重力レンズの分類
☆ 重力レンズの文献とデータベース

★ 一般相対性理論によりますと、「重力波」というものが存在します。重力波とは? (関連ページ


(資料源: 日経サイエンス1981年1月号「重力レンズとクェーサー」(F・H・チャフィー); 日経サイエンス1988年9月号「重力レンズで宇宙を探る」(E・L・ターナー); パリティ1991年12月号「宇宙の蜃気楼 重力レンズ」(福江 純); Marcia Bartusiak "Gravity's Rainbow", Astromomy, August 1997)

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General Relativity
Introductionto General Relativity


1977年12月、シカゴ大学の物理学部で、一般相対性理論を専攻する大学院生、ゲーリー・ホロヴィッツとバジル・キサントポーラスは、「なぜ、サンタクロースがわたしたちに見えないのか?」のなぞを解きました!

世界中に20億の家庭が一様に分布しているとすると、クリスマスイヴの24時間に全家庭をまわるには、1家庭につき2万分の1秒しか立ち寄れず、光速の4割ものスピードで走り回るサンタに、わたしたちは気がつかないというのです。

(別冊『数理科学』 相対論の座標〜時間・宇宙・重力 (1988年 サイエンス社)から 岡村 浩 「ブラックホールと一般相対論(I)」より)


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