
木星のリング発見のいきさつ
1974年、NASAの惑星探査機パイオニア11号が木星の赤道上空を通過したとき、その前後のときに比べ、電子や陽子などの放射線の強さが少し弱まりました。その原因として、まだ発見されていない衛星やリングの粒子が放射線を吸収しているかもしれないと考える研究者もいました。
1979年、同じくNASAの惑星探査機ボイジャー1号は、木星にリングがあるかどうか確認するため木星周囲にカメラを向けたところ、本当にリングが見つかったのです。(発見時の画像。斜めに太くのびているもの)引き続き同年に木星に接近したボイジャー2号によってもリングの撮影が行われ、木星の影にはいった2号は、振り返るように木星を撮影した画像にも細いリングが明るく写っていました。(画像)
ボイジャーの観測により、リングが3つの部分(内側から「ハローリング、主リング、ゴッサマーリング)からできていることがわかりました。逆行では、粒子が細かいほど明るく見えるのです。 微細な粒子の場合、太陽の放射の影響(ポインティング-ロバートソン効果)や木星磁場の影響(プラズマによる抵抗)を大きく受け、リング粒子にブレーキがかかり、次第に木星に近づき落下してしまいます。かなり外側にある粒子では、さらに外側へとび散ってしまうものもあります。 つまり、粒子を供給してくれるものがなければ、微細な粒子からなる惑星のリングはとても短期間しか存在できません。もし、リングが長い間存在しているものなら、リング粒子を供給してくれるものはなんでしょうか?
なお、地上の巨大望遠鏡でも赤外線による観測で、木星のリングがとらえられています。
(ハワイ、マウナケア山頂にあるNASAの赤外線望遠鏡が1994年7月12日にとらえた木星の赤外線画像の両側に、串のようなリングが写っています。山頂写真の、中央やや左の奧がその望遠鏡のドーム)
木星のリング(解説(英文))
ガリレオ探査機が、1996年11月9日に撮影した木星のリング。明るさにムラがあり、暗くなっているところもあります。近くを回る衛星の重力によるものと考えられています。(1997年1月17日発表)
木星のリング(解説(英文))
ガリレオ探査機が、1996年11月8日に撮影した木星のリング。リングまでの距離は約230万km。右の円弧は、木星上層大気中に含まれるもやの散乱光。リングも、数マイクロメートル(1マイクロメートルは千分の1ミリ)ほどの粒子が太陽光を散乱して光っているものです。はっきり見えている主リングの両側にも淡いリング部分が存在します。また、やや上下方向にも淡い光が見えています。粒子がリング面から離れているためでしょうか。主リングは木星中心から約123000km〜129000kmにありますが、外縁近くには衛星「アドラステア」や「メティス」があり、リングに影響を与えているようです。(1997年7月11日発表)
木星のリング(解説(英文))
上と同じ画像ですが、明るさの違いを色の違いで示したものです。白や黄色は最も明るい部分で、紫は最も淡い部分です。(1997年7月14日発表)
木星の希薄なリング(解説(英文))
1996年11月8日撮影にガリレオ探査機が撮影。希薄なリング部分の撮影のため、長い露出時間がかけられました。画面中央を横切っているのがそのリングです。 希薄なリングは主リングの外側に広がっています。木星半径の約3倍の距離で希薄なリングが消えていますが、主リングの明るさの10分の1ほどの明るさしかありません。この画像の左縁が木星半径の約2.2倍のところです。(1997年7月15日発表)
木星のリング(解説(英文))
木星の影の中にガリレオ探査機があるときに、逆光で撮影された木星とそのリングです。 そのような角度でリングを見ますと、微細粒子からなるリングがよく見えます。 木星のリングは主リングの内側と外側に淡いリングがあるという3重構造ですが、この画像では主リングと、その内側に拡散した淡いリング以外はよくわかりません。
1996年11月9日に撮影された2つの画像から合成されたものです。リングまでの距離は約230万kmです。探査機は、リング平面からわずか0.5度ほどのところにありました。(1998年9月15日発表)
木星のリング(解説(英文))
木星はこの画像の右方向にあります。 上の画像には、主リングと、主リングの上下にも広がっている希薄なリングが写っています。これは主リングの微粒子が電気を帯び、木星の磁場から受ける電磁気力の働きで広がったものと見られています。 主リングの外縁部の半径は約128940kmで、衛星アドラステアの軌道半径(128980km)にかなり近くなっています。
主リングの明るさは半径約127850kmでかなり暗くなっています。ここは、衛星メティスの軌道半径(127978km)の近くです。
木星に最も近いところをまわる4衛星、 衛星メティス、 衛星アドラステア、 衛星アマルテア、 衛星テーベが、木星のリングの構造に影響を与えているようです。
これらの画像は、1996年11月9日に撮影されました。(1998年9月15日発表)
木星のリング(解説(英文))
それぞれ、1996年10月5日撮影の5枚の画像をつなげたものです。 左が木星です。左下に地球の大きさが記されています。
上のモザイク画像では、画像だけを示しました。木星から遠い 部分ほど、高感度で撮像しています。(何倍の感度という数字が示されています) 木星からすぐ右へのびている明るい水平な線は、主リングなのですが、主リングが視野の手前方向に回り込んでいる部分が見かけ上、重なって見えているのです。
下の画像では、木星の最も近くを回る4つの衛星の位置などが示されています。主リングの外側に広がる淡いリング(「ゴッサマー(薄物)リング」と言われています)がある程度の厚みを保ったまま、急に画面中央付近でとぎれています。ちょうど衛星アマルテアがあるあたりです。しかも、 アマルテアの軌道の傾きと、ゴッサマーリングの厚みがおなじくらいになっているのもおもしろい事実です。
さらに、ゴッサマーリングのより希薄な部分が 衛星テーベ近くまで広がっています。この部分の厚さもテーベの軌道の傾きとよく合います。
一方、主リングのすぐ外側には メティスや アドラステアがあります。主リングのほうはこの2衛星に関係がありそうです。撮影は、ガリレオ探査機が木星の影にいるときに行われました。(1998年9月11日発表)
木星のリングと衛星の位置関係図(解説(英文))
<上>
主リング(赤紫で示してあります)は、メティス(m)とアドラステア(a)から、小天体の衝突で舞い上がった塵でできたと見られています。この2衛星の軌道は、木星の赤道に対し傾きがほとんどありません。塵の軌道は、衛星とほぼ同じ軌道になり、厚みの少ないリングになります。<中>
アマルテア(A)から同じようにして舞い上がった塵(オレンジで示しました)が、内側のゴッサマーリングをつくったようです。 アマルテアの軌道はすこし傾いているため、塵も同様の軌道になり、リングに厚みができます。<下>
同様にして、外側のゴッサマーリングは、 テーベ(T)によってできたと見られています。(1998年9月15日発表)
木星のリングと衛星の位置関係図(解説(英文))
これは構造をわかりやすくした図で、実際の大きさや色とは違う部分があります。
(1998年9月15日発表)
木星のそばにたまたまやってきた流星体や、小惑星・彗星のかけらは、木星の強い重力で加速され、これらの衛星に猛スピードでぶつかります。衛星表面に突入した小天体は高熱でたちまち気体となり爆発したことでしょう。その際に舞い上がった塵は、小さな衛星の弱い重力を振り切って宇宙空間に漂いでたでしょう。これらの衛星表面が衝突でできたクレーターだらけのことや、衛星表面の色とリング粒子の色が似ていること、衛星軌道とリングの構造の関係などから、以上のような考えが発表されました。(詳しくは こちら)
☆ 木星のリングの、実際の色に近い画像はこちら。(ボイジャー2号による画像2枚を合成。2枚の時間差のため、木星の縁の色がずれています)
(資料源: http://www.jpl.nasa.gov/galileo/; J・エリオット/R・カー「惑星のリングはなぜあるのか」岩波書店 1987)